学科1(計画)の”劇場”について解説!重要ポイント5選!

一級建築士試験
こんな人におすすめ!

・建築士試験を受験予定の人

・劇場の建築手法に興味がある人

劇場

重要ポイント!

①ステージの種類
プロセニアムステージ
客席と舞台の間にプロセニアムアーチという額縁を持った形式

オープンステージ
客席と舞台が同じ空間の中にある形式。舞台がオープンなので、観客との一体感を生み出しやすい。

アダプタブルステージ
必要に応じて客席と舞台との関係を変化させ、演目に応じて適切な空間を作り出せるように工夫された形式

④客席の1席当たりの幅は50cm程度、奥行き(背もたれ相互の間隔)は90~100cm程度

客席から舞台までの距離の限界は、人形劇など:15m、演劇など:22m、オペラなど:38m

全体計画

劇場とは、種々の演劇、舞踊、音楽を演じ、一般観客が観賞する建築である。

種々の催し物はそれぞれに特殊な舞台装置・機構、音響、照明効果、雰囲気を要求されるので、利用に見合った専門の演劇場で演じることが望ましい。しかし、経営上の問題、施設の数などから兼用される場合が多い。
我が国では、市民会館、公会堂など集会施設を含めた多目的ホールが建設されている。

劇場の種類

名称特徴
演劇劇場①肉声およびマイクロフォンなどの機器による音響効果をあげる計画が必要である。

②舞台機構等演出内容によって対応できるある程度の専門的装置が必要
オペラ劇場①肉声を原則、均一な音の分布となるよう音響効果に配慮する。

②大がかりな舞台機構、装置、楽屋裏方等が必要である。

③ロビー、ラウンジ等幕間を過ごす場所が必要である。

④客席は充分なシートカープを付け、見やすく居心地のよいものとする工夫が大切である。
コンサートホール①音響設備には特に配慮が大切である。

②吸音材、反射板を正しく計画して音の静かさ、バランス、響き等を正しく伝えることが必要である。
多目的ホール①多目的使用に対応するため、それぞれの上演種目に対しては多少の制限がでる。

②異なる音場を作り出す残響可変装置が必要となる場合がある。

③異なった客席規模への対応から客席可変を有する場合がある。
歌舞伎劇場①肉声を原則とするが、音響設備は整えておく。

②役者の微妙な表情の変化、音の均一的な分布に対応する計画が必要である。

③客席は見やすく居心地のよい工夫や雰囲気づくりが大切である。
映画館①音響増幅は機械に任せるので、音響調節は比較的自由

②映画の性質上、目の疲労を呼びやすいので、心身ともにくつろげる工夫が必要。

立地条件

時間的に集中して多人数が集合、離散するので、前庭、寄付きは充分な広さが必要である。また、なるべく2つ以上の道路に接し、車と徒歩による来観者の分離をすることも重要である。

規模

一般に、多目的ホールの延べ面積は、4~6m/席程度が目安となる。

劇場・ホールの部門構成

部門構成は、表側といわれる客席および観客サービスゾーンと、裏方といわれる舞台および舞台背後のゾーンに大別される。裏方には、管理部門、楽屋部門、リハーサル部門、倉庫部門、製作部門、芸術制作部門等がある。

特に、楽屋部門と舞台との関係、大道具搬入口と舞台との関係、さらにリハーサル室の規模と配置の仕方は特に重要である。各室・機能間の結びつきやレベル差などを慎重に計画する必要がある。

舞台の形式

ホール空間では、舞台と客席の密接な関係が重要であり、その用途に合わせて、舞台はプロセニアムステージ形式オープンステージ形式に大別される。

プロセニアムステージ

近代演劇発達の過程で生み出されたもので、客席と舞台の間にプロセニアムアーチという額縁を持った形式である。現代の劇場のほとんどはこの型式である。

オープンステージ

ギリシャ円形劇場のように客席と舞台が同じ空間の中にある形式である。

舞台がオープンなので、観客との一体感を生み出しやすいが、幕や照明等の設備に難がある。

さらに、「舞台と客席の面し方」による形式分けもあり、中央の舞台を取り囲んで周囲に客席があるセンター(アリーナ)ステージと、舞台の三方程度を客席が囲むようなスラストステージがある。

アダプタブルステージ

プロセニアムステージ形式とオープンステージ形式の両者の可変性を考慮し、必要に応じて客席と舞台との関係を変化させ、演目に応じて適切な空間を作り出せるように工夫された形式である。

舞台の大きさを自由に調整できたり、座席数も自由に調整できるのが特徴であり、下記のようなタイプに可変できる。

コンサートホールの空間形状

ホール空間の形状により、シューボックス型、アリーナ型に分けられる。

舞台の構成要素

舞台は劇場の最も重要な部分である。一般的に、舞台の床は前列の客席の床レベルよりも1.0m程度高くなっていて、演技者の動きや、舞台装置のセッティングの面などから木造床が多く採用されている。

舞台の基本寸法

プロセニアム型の劇場の基本寸法は、プロセニアム開口幅、高さが基準となる。

1)舞台の奥行の目安は、プロセニアムの開口幅の1.2倍以上

2)舞台の幅の目安は、プロセニアムの開口幅の2.0倍程度

3)舞台からスノコまで(フライタワー)の高さの目安は、プロセニアムの開口高さの2.5倍以上

4)側舞台の天井高は、舞台装置がセットされた状態で収納されなければならないので、プロセニアムの開口の高さ以上としなければならない。

舞台の上手・下手

客席から舞台に向かって右側を上手といい、左側を下手という。

舞台の消火設備

一般に、舞台部には開放型スプリンクラー設備が設けられる。

客席

座席の寸法

劇場等の屋内観客席の固定座席は、座席の幅(1人分の間口)は42cm以上とし、前後間隔は80cm以上、座席の間隔は35cm以上で計画しなければならない。

劇場の座席の幅(1人分の間口)は50cm程度、前後間隔は90~100cm程度で、客席部分の1人当たりの床面積は0.5~0.7m/人程度である。

劇場の客席の天井高は平均14~18m程度であり、気積は、多目的ホールの場合で5~8m/人程度、音楽・演奏ホールの場合で8~12m/人程度が多い。客席の照度は、上演(上映)中でも、0.2lx以上とする。

客席通路

客席の通路等は緊急避難時を想定し、極力段差は設けず、ホールの扉は避難上、内開きとしてはならない。

劇場で左右対称に客席配置をする場合、その中心線上に客席内の縦通路を配置することは、①演技者の集中を欠く、②最も良い座席を確保できなくなる、などの理由から、好ましくない。

客席数は、横方向縦方向ともに最大20席とし、横通路の幅員は1m以上、縦通路の幅員は80cm以上と定められている。

サイトライン

客席の各々の人が、前列の人の頭または肩を越して舞台などを見ることができる視野の限界線をサイトラインという。

観客席の勾配は、サイトラインに配慮しつつ、観客が演者や競技者との一体感や臨場感を得られるよう計画する。

屋外競技場の芝生席の場合は、安定性を考慮してサイトラインを無視して1/6以下とする。

客席と舞台との関係

舞台までの視距離

俳優の表情や細かい動きが判別可能な距離15m(人形劇・児童等)とするのが望ましい。

収容人数との兼合いで、せりふを主体とする演劇や小規模な演奏用ホールでは22m(一次許容限度)オペラ、ミュージックプレーでは38m(二次許容限度)までは許容範囲とされる。

舞台と客席最前列の関係

舞台の場合は、客席の位置は、舞台の中心点から120°の範囲内が望ましい。

スクリーンの場合は、スクリーンが各席最前列中央から90°以内ならば観賞にさしつか
えない。

見下ろす俯角の範囲

舞台の場合は15°以下が望ましく、最大の場合でも30°が限度である。

スクリーン(35mm以上の映写設備の場合)も30°が限度である。

見上げる仰角の範囲

舞台では見上げる形は好ましくなく、スクリーンは35°以内とする。

劇場・ホールにおける音響計画は、その良し悪しを決定付ける大きな要因であり、特にコンサートホールにおける室の形状と仕上げは重要である。

また、ホール間や練習室・リハーサル室との遮音や空調騒音の低減、さらに鉄道や幹線道路など交通振動からの遮断も重要な検討事項である。

最適残響時間

明瞭度を重んじる講演会などの場合は、残響時間は短く、クラシック音楽や教会堂での説教などでは、残響時間は長い方がよいとされる。

備品と収納

舞台上で頻繁に使われる照明機器およびアクセサリー類、平台・開き足等の常時出し入れする舞台備品は舞台に接して30~40mの空間を確保する。

場所をとらない照明器具の収納方法としては、バトンに吊り込んで収納する方式がある。

備品は移動のしやすさを考慮して舞台レベルに設けることが望ましい。

各部計画

ロビー

不特定多数の人々が自由に出入りする開放された空間であり、その機能は、館内施設への動線処理、誘導、待合せ、情報提供、談話・休憩などである。ホールの種類などによる差はあるが、客席1席当たり0.5~1.0m程度である。

ホワイエ

開演待ちと幕間の休憩の空間。

ロビーとは異なり特定のホールに付属した雰囲気づくりが必要である。

客席1席当たり1.0m程度が望ましいが、ロビーとあわせて1.0m以下の例も多い。

便所

休憩時間に集中的な利用が特徴であり、便器の洗浄には連続して使用可能なフラッシュバルブ式を用いる。

リハーサル室

公共の多目的ホールのリハーサル室は、出演者以外に一般利用者も多目的に使用できるよういくつか設けられるが、出演者と一般者の動線を分離する工夫が必要である。

楽屋

舞台との位置関係が最も重要であり、距離が近いこと、同一階にあることが基本となる。

搬入口

劇場の搬入口は、搬入しやすさを考慮して、搬入トラックの荷台高さと同じ1m程度のプラットホームを用いた形態が一般的である。

特に近年は、ウイング式の大型トラックでの搬入を考慮して、駐車スペースの有効天井高は最低でも5m必要とされている。

天候に左右されず搬入作業を安全に行うための搬入スペースとしては、大型トラックがそのまま入り、シャッターを閉めることができるスペースが必要である。

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