S造の柱と梁の仕口が、溶接によって接合されているときは、下図のような状況になります。
では、梁に働いている応力に対して、この溶接部分は耐えることができるのでしょうか。
検討してみます。
状況としては、H-350×175×11×7の断面の梁が、柱に溶接されています。
この梁には、(短期時)M=100kN・m、Q=50kNが働いているという状況です。
溶接の種類
溶接には、「突合せ溶接」と「すみ肉溶接」の2種類あります。
突合せ溶接:完全一体化溶接。今回は、フランジに使用され、曲げモーメントを負担している。
すみ肉溶接:コーナー溶接。今回は、ウェブに使用され、せん断応力を負担している。
上図では、一か所に見えるが、裏表の両面に施されている。
突合せ溶接
それでは、実際に溶接の検討をしていきます。
溶接の検討に必要な情報を書き出してみました。
フランジの断面係数(略算法):FZ=652575m㎥
フランジの断面係数(精算法):FZ=632287m㎥
材種:SN400B(F=235n/㎟)
突合せ溶接fb=156N/㎟(長期)
すみ肉溶接のfs=90.4N/m㎡(長期)
梁に働く曲げモーメントは、梁全体で支えている訳ではなく、梁のフランジに負担されています。
そこでフランジの曲げ応力度σbを算出することで、突合せ溶接部の許容応力度と比較できるということです。
フランジの曲げ応力度σb=M/FZ
(略算法)
FZ=B×(t-h)=652575m㎥
(精算法)
FZ=B×(H3乗ーh3乗)=632287m㎥
上式のように、フランジの曲げ応力度σbは、σb=M/FZで求められます。
フランジの断面係数FZは、略算法と精算法の2種類あり、本問では、略算法を採用しました。
よって、
σb=M/FZ=100×1000×1000/652575=153N/m㎡
となります。
あとは、曲げ耐力fbと比べるだけです。
許容曲げ耐力fbは、剛構造設計基準に「梁材種SN400B」をもとに記載されており、
(長期)突曲げ耐力fb=156N/㎟です。
(短期)=(長期)×1.5となるため
曲げ応力度σb<曲げ耐力fb×1.5
153<156×1.5・・・OK
となり、地震時においても突合せ溶接は、破断しないということになります。
すみ肉溶接
梁に働くせん断力は、ウェブによって負担されます。
そのため突合せ溶接と同じように、ウェブにかかるせん断応力度τが、すみ肉溶接のせん断耐力fsよりも小さければすみ肉溶接部分は、短期時において破断しないということになります。
まずは、ウェブにかかるせん断応力度τを求めていきましょう。
せん断応力度τ
τ=Q/A=50×1000/1083.6=23
すみ肉溶接の断面積A
A=のど厚×ℓ=4.2×258=1083.6㎟
ℓ:溶接長
のど厚=S×0.7=6×0.7=4.2mm
すみ肉溶接の断面積Aを求まるときに出てくる「のど厚」と「S(サイズ)」は、どこの差しているのでしょうか。
すみ肉溶接の断面積Aは、S(サイズ)×ℓ(溶接長)です。サイズSは、のど厚の0.7倍で決まります。
本問では、サイズS=0.6mmとしています。
よって、せん断耐力τを求まることができました。
最後に、せん断許容応力度fsと比べるだけです。
突合せ溶接と同様に、せん断許容応力度fsは、剛構造設計基準に記載してあり、「梁材種SN400B」の場合は、(長期)fs=90.4N/㎟です。
そのため
せん断応力度σs<曲げ耐力fs×1.5
23<90.4×1.5・・・OK
となるため、梁と柱をの接合部は、特に地震時においても破断しないということです。
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